曲の紹介
【曲名】Don’t Think Twice, It’s All Right(くよくよするなよ)
【アーティスト】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
【作詞・作曲】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
【概要】ボブ・ディランが1963年に発表し、同年リリースした2枚目のスタジオアルバム「 The Freewheelin’ Bob Dylan(フリーホイーリン・ボブ・ディラン) 」に収録された。
ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)のカバー・バージョンが1963年にヒットし、1963年にこの曲を収録したアルバム「In the Wind」は全米チャート1位を記録した。
それ以降、多くのアーティストがカバーしている。
(参照元 : Don’t Think Twice, It’s All Right -Wikipedia)
(歌詞引用元 : Genius/Don’t Think Twice, It’s All Right)
曲の解釈
日本語の題名が「くよくよするなよ」なので、誰かに対する応援歌なのかなと思っていました。
実際、アコースティック・ギターの静かな音色に、ディランの静かな歌声が心にすっと入り込み、落ち込んだ時とかに聴くと、涙がこぼれたこともありました。
実際訳してみると、恋人か奥さんが若くて、すれちがいが多く、うまくいかずに出ていく主人公の男性の言葉がつづられていて、思っていた「応援歌」とはずいぶん印象がちがうなと驚きました。
そこには、主人公の相手に対するやるせない不平や不満が述べられていて、結局「お互い新しい道を行くんだ、もう振り返るな」と言っているように思います。
ディランはこの曲について、「この曲は単なるラブソングではなくて、自分をよくできる、より気持ちよくするために、自分自身へ送る声明のようなもの」と言っているようです。
いろんなアーティストがカバーしている名曲ですが、ここでは「ピーター・ポール&マリー」と「ジョーン・バエズ」の動画をご紹介します。
歌詞の和訳
(原詞:太文字)
Don’t Think Twice, It’s All Right
Well, it ain’t no use to sit and wonder why, babe
どうせ無駄さ、座り込んでどうしてと思い悩んでも、ベイビー
If’n you don’t know by now *1
今になっても分からないのなら
And it ain’t no use to sit and wonder why, babe
どうせ無駄さ、座り込んでどうしてと思い悩んでも、ベイビー
It’ll never do somehow
どうにもならないさ
When your rooster crows at the break of dawn
お前の雄鶏が鳴く夜明け頃には
Look out your window and I’ll be gone
窓の外を見てみろ、俺はもういない
You’re the reason I’m a-traveling on
お前が理由さ、旅に出るのは
But don’t think twice, it’s all right *2
だが、もう振り返るな、これでいいのさ
2)
And it ain’t no use in a-turning on your light, babe
どうせ無駄さ、自分の電灯を点けようとしても、ベイビー
The light I never knowed
そんな電灯なんて知らなかった
And it ain’t no use in turning on your light, babe
どうせ無駄さ、自分の電灯を点けようとしても、ベイビー
I’m on the dark side of the road
俺は、道の暗闇にいるから
But I wish there was something you would do or say
だが俺は願う、お前なりに何かしよう、何か言おうとしたと
To try and make me change my mind and stay
俺の気持ちを変えて、居続けるように
But we never did too much talking anyway
だが、俺たちまったく会話しなかったよな、何しろ
But don’t think twice, it’s all right
だが、もう振り返るな、これでいいのさ
3)
So it ain’t no use in calling out my name, gal
どうせ無駄さ、大声で俺の名を呼んでも、娘よ
Like you never done before
今までしたことがないように
And it ain’t no use in calling out my name, gal
どうせ無駄さ、大声で俺の名を呼んでも、娘よ
I can’t hear you anymore
俺にはもう聞こえない
I’m a-thinking and a-wondering, walking down the road
今、考えながら不思議に思う、道を歩きながら
I once loved a woman, a child, I’m told *3
俺はかつて女性を愛したが、子供だったようだ
I give her my heart but she wanted my soul
俺は心を捧げてるが、彼女は俺の魂を求めた
But don’t think twice, it’s all right
だが、もう振り返るな、これでいいのさ
4)
So long, honey babe *4
またな、愛しいベイビー
Where I’m bound, I can’t tell
行先は、教えられない
Goodbye’s too good a word, babe
さよならなんてきれいすぎるよ、ベイビー
So I’ll just say, “Fare thee well” *5
だからこう言う、「お疲れさま」と
I ain’t a-saying you treated me unkind
お前に言うつもりはない、俺を冷たくあしらったこと
You could’ve done better, but I don’t mind *6
もっと上手くできただろうに、だがもう気にしちゃいない
You just kinda wasted my precious time
お前はほんの少し無駄にしたのさ、俺の大切な時間を
But don’t think twice, it’s all right
だが、もう振り返るな、これでいいのさ
キーワード
*1 If’n : if and whenの略
*2 don’t think twice : 直訳では「二度と考えるな」ですが、「深く考えるな」「遠慮するな」の意味で使われます。
*3 I’m told : 「言われる」ですが、ここでは口語的に「~のようだ」としました。
*4 So long : “good-bye”と同じ「さようなら」ですが、口語的に「また会うまで元気でね」の意味を含んで使われます。ここでは「またな」としました。
*5 Fare thee well : 「完璧」「完全な状態」ですが、古語的に「さらば」の意味があり、ここではやれることはやって別れるの意味で「お疲れさま」としました。
*6 could’ve (done) : “could have”の略で、「(しようと思えば)できたはず」の意味
アーティストの紹介
【名 前】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
*出生名:ロバート・アレン・ジマーマン(Robert Allen Zimmerman)
【生誕】1941/5/24-
【出身地】アメリカ ミネソタ州ヒビング(生誕はミネソタ州ダルース)
【概要】ミネソタ大学を中退後、ミネアポリスでフォークシンガーとして活動を始める。このころから「ボブ・ディラン」と名乗るようになる。
その後、ニューヨークにてアルバム「ボブ・ディラン」でデビューする。
1963年に2枚目のアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」をリリースし、「風に吹かれて」をPPMがカバーして大ヒットし、有名となる。
彼の代表曲の「風に吹かれて」や「The Times They Are a-Changin’」などは、当時のアメリカの差別社会に対する公民権運動や反戦運動のアンセムともなった。
フォーク界の貴公子とも呼ばれ世界中に名前が広がって行ったが、1965年リリースされた「ライク・ア・ローリング・ストーン」では、エレキギターを持ち、バックにThe Bandを従えてロックの演奏に切り替え、フォークからフォークロックへ演奏形態を変えた。
(1966年ロイヤル・アルバートホールでのライブで、観客から「ユダ(裏切者)」と言われ、それに対して音量を上げて演奏したエピソードがライブ動画に残っています。)
その後、多くの賞(2012年大統領自由勲章、グラミー賞10回以上、アカデミー賞等)を受賞し、2016年「偉大なアメリカ音楽の歴史上で、新しい詩的表現を生んだ」としてノーベル文学賞を受賞している。
(彼は賞や名誉に興味がないのか、あるいは自分の音楽が文学として認められたことに対する抵抗があったのかもしれませんが、当初受賞に無反応で授賞式も欠席しています。)
アルバムの紹介
アルバム
1963年 フリーホイーリン・ボブ・ディラン / The Freewheelin’ Bob Dylan
1964年 時代は変わる / The Time They Are a-Changin
1965年 追憶のハイウェイ61 / Highway 61 Revisited
1965年 ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム / Bringing It All Back Hom
1966年 ブロンド・オン・ブロンド / Blond on Blonde
1975年 血の轍 / Blood on the Tracks
1976年 欲望 / Desire
ライブ・アルバム
1974年 偉大なる復活 / Before the Flood
ベスト・アルバム
1967年 ボブ・ディランのグレーテスト・ヒット / Bob Dylan’s Greatest Hits
1971年 グレーテスト・ヒット第2集 / Bob Dylan’s Greatest Hits Vol. II