曲の紹介
【曲名】Like a Rolling Stone (ライク・ア・ローリング・ストーン)
【アーティスト】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
【作詞・作曲】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
【概要】1965年シングル、アルバム『追憶のハイウェイ61』でリリースされた。この曲は彼の最大のヒット・シングルであるだけでなく、60年代のロックを代表する曲となった。
ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)では1位にランキングされている。
(参照元Wikipedia:ライク・ア・ローリング・ストーン)
(引用元Wikipedia:ボブ・ディラン)
曲の解釈
この曲のストーリーは、かつて上流階級にいた女性の転落を描いたもので、その女性へ問いかけるきびしい言葉で、当時の貧富の格差や社会体制への批判をしている気がします。
でも最後の章で、「何も手に入れてないんだから、失うものも何もないじゃないか」「今は誰もあんたを知らないんだから、何も隠さなくてもいいんだ」とあり、単に批判だけじゃなくて、「ありのままでいいんだよ」って言ってる気がします。
この曲はボブ・ディランがフォークソングからロックへ変わった、きっかけとなった曲です。
この曲がリリースされた翌年1966年にNewport Folk Festival(ロイヤル・アルバートホール)のライブでのできごと、観客は従来のフォークの貴公子と呼ばれたディランのファンが多く、ロックバンドの編成でのライブに不満だったみたいです。
観客の一人が”Judas”「ユダ」(裏切者の意)と叫んで、そしてまた別の一人が “I’m never listening to you again, ever” 「お前なんか、今後二度と聴かないぞ」と叫んだ。ディランは、 “I don’t believe you.” 「お前のことは信じない」しばらく後に “You’re a liar.” 「お前は嘘つきだ」 と言い、バックのバンド(The Band)に向かって “Play it fuckin’ loud.”「やかましく演奏しよう」と呼びかたて演奏が始まる。
(これを言ったのはロビー・ロバートソンとする説も?)でも、このライブのこの1曲で、彼は既存の価値観及び世界に”Fuckin”って言ってるんじゃないでしょうか。今までのもの、既存のものを叩き壊すのがRockとするならば、彼はまさに自分のフォークというレッテルをこの曲で、たたき壊したのではと思います。この動画ぜひ観てください。歴史の1ページだと思います。
この曲こそ、和訳してそのすばらしさを感じました。この曲はBob Dylanの代表曲で、ローリングストーン各紙がNo.1と認めたロックナンバーですが、ほんとうに彼の生き方をそのものを表しているナンバーだと思いました。和訳してほんとうによかったと思います。
歌詞の和訳
(原詞:太文字)
Like A Rolling Stone
Once upon a time you dressed so fine
その昔、あんたはきれいに着飾ってた
Threw the bums a dime in your prime, didn’t you?
あんたが華やかりし頃、ルンペンにコインを投げつけてなかったか
People call say ‘beware doll, you’re bound to fall’
こう言ってる奴もいた「お嬢さん気をつけな、あんたはいずれ落ちぶれるさ」
You thought they were all kidding you
あんたは、みんな自分をからかってると思った
You used to laugh about
あんたは、いつもあざ笑ってた
Everybody that was hanging out *1
あてもなく、ぶらついていた奴らを
Now you don’t talk so loud
今のあんたは、声高にはしゃべらない
Now you don’t seem so proud
今のあんたは、高慢には見えない
About having to be scrounging your next meal *2
次の飯を、乞わなくてはならないからな
How does it feel?
どんな気持ちだい
How does it feel?
どんな気持ちだい
To be without a home
家無しになるって
Like a complete unknown
まったくの名無しになるって
Like a rolling stone
まるで、転がる石になるって
2)
Ah, you’ve gone to the finest school all right, Miss Lonely
あんたは、ずいぶんりっぱな学校に通っていたよな、ミス・ロンリー
But you know you only used to get juiced in it *3
でもそこでは、ただ遊び惚けていただけだよな
Nobody’s ever taught you how to live out on the street *4
誰もあんたに、路上で生きるすべなんて教えなかったけれど
And now you’re gonna have to get used to it
今はもう、それに馴れなくてはいけなくなったな
You say you never compromise *5
あんたは、ぜったい自分からは折れないと言う
With the mystery tramp, but now you realize *6
あの謎の流れ者には、でもやっと気づくんだ
He’s not selling any alibis *7
あいつには、どんな駆け引きも通じない
As you stare into the vacuum of his eyes *8
奴の空っぽの目を見つめながら
And say “Do you want to make a deal?”
こう言うのさ「取引、こうしてみない?」
How does it feel?
どんな気持ちだい
How does it feel?
どんな気持ちだい
To be on your own *9
ひとりで生きるのは
With no direction home
帰る家も見失って
A complete unknown
まったくの名無しになるって
Like a rolling stone
まるで、転がる石になるって
3)
Ah, you never turned around to see the frowns *10
あんたは振り返って、そのしかめ面を見ようともしなかった
On the jugglers and the clowns when they all did tricks for you
あんたのためにすべて演り終えた、曲芸師や道化師たちが浮かべた
You never understood that it ain’t no good
あんたには、それがよくないことなんて、まったくわからなかった
You shouldn’t let other people get your kicks for you *11
あんたが楽しむために、人に無理やり演らせてはだめだ
You used to ride on a chrome horse with your diplomat
あんたはいつも、口達者な彼氏とクロムメッキのバイクに乗ってた
Who carried on his shoulder a Siamese cat
そいつは肩にシャム猫を乗せていた
Ain’t it hard when you discovered that
あんたが、それに気づいた時は辛かったよな
He really wasn’t where it’s at *12
奴は、決していい人間なんかではなく
After he took from you everything he could steal
結局、あんたからすべてを盗んでいった
How does it feel?
どんな気持ちだい
How does it feel?
どんな気持ちだい
To hang out on your own
一人で彷徨うって
With no direction home
帰る家も見失って
a complete unknown
まったくの名無しになるって
like a rolling stone
まるで、転がる石になるって
4)
Ah, princess on a steeple and all the pretty people *13
塔の上の王女、そしてずる賢い奴ら全員
They’re all drinking, thinking that they’ve got it made *14
みんな酒を飲んでいる、よく成り上がってこれたと思いながら、
Exchanging all precious gifts
たいそうな貢ぎ物と引き換えに
But you better take your diamond ring, you better pawn it babe *15
でもあんたは持ってるダイヤの指輪を使えばいい、金にするのさ
You used to be so amused
あんたはいつも、とても面白がっていたよな
At Napoleon in rags and the language that he used
あの、ボロをまとったナポレオンと彼の口癖を
Go to him now, he calls you, you can’t refuse
さあ、今すぐ彼のもとへ行きな、彼があんたを呼んでる、あんたも拒めない
When you ain’t got nothing, you got nothing to lose
何も手に入れてないんだから、失うものも何もないじゃないか
You’re invisible now, you’ve got no secrets to conceal
今は誰もあんたを知らないんだから、何も隠さなくてもいいんだ
How does it feel?
どんな気持ちだい
How does it feel?
どんな気持ちだい
To be on your own
一人ぼっちになるって
With no direction home
帰る家も見失って
Like a complete unknown
まったくの名無しになるって
Like a rolling stone
まるで、転がる石になるって
キーワード
*1. hanging out (hang out) 遊ぶ、ぶらぶらする
*2. scrounging(scrounge)あさる、乞う、たかる、ねだる
*3. get juiced(juice)ジュース、元気、活力、精力、麻薬(スラング)、酒を飲む(動詞)、ここでは酒、薬、楽しむをまとめて「遊びほうけて」としました。
*4. live out 生き延びる、持ち越す
*5. compromise 妥協、和解
*6. tramp 浮浪者、放浪者
*7. He’s not selling any alibis アリバイを売っていない→アリバイが通じないから「どんな駆け引きも通じない」としました
*8. vacuum 真空、空白、空虚感
*9. on your own 各自で、自分自身で
*10. frowns まゆをひそめること、しかめっつら
*11. get a kick スリルを感じる 快感を覚える~(語源)kickとは、コカインなどのドラッグから得る刺激
*12. where it’s at すばらしい、すてきな
*13. pretty ずるい、賢い(古典英語)
*14. got it made ~のおかげで、~までたどりついた
*15. pawn 質に入って、質に入れる
アーティストの紹介
【名 前】Bob Dylan(ボブ・ディラン)
*出生名:ロバート・アレン・ジマーマン(Robert Allen Zimmerman)
【生誕】1941/5/24-
【出身地】アメリカ ミネソタ州ヒビング(生誕はミネソタ州ダルース)
【概要】ミネソタ大学を中退後、ミネアポリスでフォークシンガーとして活動を始める。このころから「ボブ・ディラン」と名乗るようになる。
その後、ニューヨークにてアルバム「ボブ・ディラン」でデビューする。1963年に2枚目のアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン」をリリースし、「風に吹かれて」をPPMがカバーして大ヒットし、有名となる。
彼の代表曲の「風に吹かれて」や「The Times They Are a-Changin’」などは、当時のアメリカの差別社会に対する公民権運動や反戦運動のアンセムともなった。
フォーク界の貴公子とも呼ばれ世界中に名前が広がって行ったが、1965年リリースされた「ライク・ア・ローリング・ストーン」では、エレキギターを持ち、バックにThe Bandを従えてロックの演奏に切り替え、フォークからフォークロックへ演奏形態を変えた。
(1966年ロイヤル・アルバートホールでのライブで、観客から「ユダ(裏切者)」と言われ、それに対して音量を上げて演奏したエピソードがライブ動画に残っています。)
その後、多くの賞(2012年大統領自由勲章、グラミー賞10回以上、アカデミー賞等)を受賞し、2016年「偉大なアメリカ音楽の歴史上で、新しい詩的表現を生んだ」としてノーベル文学賞を受賞している。
(彼は賞や名誉に興味がないのか、あるいは自分の音楽が文学として認められたことに対する抵抗があったのかもしれませんが、当初受賞に無反応で授賞式も欠席しています。)
代表アルバム
1963年 フリーホイーリン・ボブ・ディラン / The Freewheelin’ Bob Dylan
1964年 時代は変わる / The Time They Are a-Changin
1965年 追憶のハイウェイ61 / Highway 61 Revisited
1965年 ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム / Bringing It All Back Home
1966年 ブロンド・オン・ブロンド / Blond on Blonde
1975年 血の轍 / Blood on the Tracks
1976年 欲望 / Desire