1960~80年代の洋楽には、歴史を感じさせる曲が多くあります。
多くの戦争や人種差別、社会不安等の哀しい歴史を刻んだ曲たちをご紹介していきます。
Scarborough Fair(スカボロー・フェア)– サイモン&ガーファンクル
この曲の原曲はイギリスの民謡で、人から人へ伝承してきたバラッド(Ballad)です。
スカボロー(スカーブラ)の市場へ行く人へ、恋人への不可能な無理難題を言づけます。
彼女はもう亡くなっていて無理難題が一つでも叶えば、奇跡が起きて彼女が蘇るのではと主人公が期待する物語です。
この曲の背景には中世のイングランドでは多くの戦争が起きており、犠牲になった多くの人々への鎮魂の願いが感じられます。
The Night They Drove Old Dixie Down(ザ・ナイト・ゼイ・ドローヴ・オールド・ディキシー・ダウン)– ザ・バンド
この曲は、1861年~1865年にかけて起きたアメリカの南北戦争を舞台にしています。
敗北した南軍に従軍した白人の青年を主人公にして、1865年の敗北がきまったリッチモンドの陥落の悔しい思い出を中心に、南軍のロバート・E・リー将軍に代表される南軍の誇りや、戦争で亡くなった兄の無念さなどをフィクションですがリアルに描いています。
Acadian Driftwood(アカディアン/アケイディアンの流木)– ザ・バンド
「The Night They Drove Old Dixie Down」は南北戦争を舞台にしていますが、この「Acadian Driftwood」は、それより1世紀早い17世紀に北アメリカで起きたフレンチ・インディアン戦争が舞台です。
先住民のインディアン+フランス軍の同盟軍とイギリス軍+アメリカ植民地軍の連合軍が、北米のアカディア/アケイディアでの戦いがありました。(エイブラハム平原の戦いがよく知られています。)
主人公の青年は先住民のインディアンで、イギリス連合軍と戦います。しかし、連合軍の勝利により親戚を頼ってニューオーリンズあたりの南部で農園で働き始めます。しかし、災害があり故郷のアルカディアへ帰る決心をします。
この曲もロビー・ロバートソン(The Bandのギタリスト)によるフィクションですが、主人公の目を通して戦争の様子や歴史観をリアルに描いています。
The House of the Rising Sun(朝日のあたる家)– ボブ・ディラン
アメリカのフォークソングとして歌い継がれてきた曲で、”Rising Sun Blues”とも呼ばれ、貧しい少女が娼婦に身を落として生きてきた自分の半生を、ブルースのように悲しく語っています。
(アニマルズバージョンでは、男性が身を崩して刑務所(少年院)に行く内容になっている)
おそらく、19世紀前半頃のアメリカにおいて、実際に起きていたことと思うと、切ない気持ちになると共に、当時のアメリカ社会を感じられる1曲だと思います。
What’s Going On(ホワッツ・ゴーイン・オン)– マーヴィン・ゲイ
この曲は、作詞者の一人であるレナルド・ベンソンが、TVでベトナム戦争に対するデモで、警察の暴力を見た時に、「What’s goin on?~一体何がどうなっている」といった言葉から生まれました。
歌詞は、戦争への講義や怒りが表現されていると同時に、監視線に、プラカードなどが出てきて、当時のベトナム戦争への反戦デモや社会情勢がはっきりと感じられる名曲だと思います。
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