曲の紹介
【曲 名】The Boxer(ボクサー)
【アーティスト】Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)
【作詞】【作曲】Paul Simon(ポール・サイモン)
【概 要】この曲は、サイモン&ガーファンクルのシングルとして1969年にリリースされ、1970年にアルバム”Bridge over Troubled Water”「明日に架ける橋」に収録された。
ビルボード誌のホット100では7位を記録し、彼らの代表する楽曲となった。
ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)では105位にランキングされている。
【記事参照元】: The Boxer-Wikipedia
【写真引用元】:Simon & Garfunkel-Wikipedia
曲の解釈
ポール・サイモンは、「いつも聖書を読んでいたからバイブル的な表現があり、この曲自体は自分について書いた」と言っています。
その当時、彼自身アンフェアな批判を受けていて、そのことに向けて書かれたようです。
曲の内容は、1)~5)までは主人公が少年時代からのことを叙述することから始まります。
無一文で家を出て、ニューヨークの街で、孤独で貧困にあえぐ生活の様子を語っています。
4)の歌詞は、「明日に架ける橋」の収録版にはありませんでした。
しかし、1969年11月のツアーから挿入されています。
内容は抽象的な表現で、「時は過ぎていき、いろいろ変化はするが、それが重なると結局はあまり変わりはなくなる」と言っています。
ちなみに、このアルバムを最後に解散するので何か関係しているのではと思えてきます。
6)では一人のボクサーのことを語っています。
幾度となくプロのリングで試合をしてきて、負けた相手のこと(グローブ)を忘れずにいる。
その中には、悲惨で屈辱的な負け方(泣いて詫びるまで、打ちのめされた)もあるが、今でも彼は平然とボクサーでいると。
そしてコーラスでは”Lie la lie”「うそ」という言葉が続きます。
このlieについてポール・サイモンは意味のない文字だと言っています。
しかし、この曲全体を通じて「人間とは見た目ではわからないが、とても弱い、哀しい面を抱えているもの」と言っている気がします。
そして、最後に続くコーラスの”Lie la lie”はコーラスではなく、7番目の歌詞ではないかと思います。
文字では表現できない何かを表現したかったのではと感じます。
訳してみて、ほんとうに人間の哀しさや不思議さを表現した、深くて素晴らしい曲だと思いました。
歌詞の和訳
(原詞:太文字)
The Boxer
I am just a poor boy
僕はただの貧しい少年で
Though my story’s seldom told
生い立ちを語られることは、まずないけど
I have squandered my resistance *1
ずっと自立できないでいた
For a pocketful of mumbles *2
いつもごまかしてばかりいて
Such are promises
特に約束する時なんて
All lies and jest
全部が嘘で戯れさ
Still a man hears what he wants to hear
だから、みんな必要なことしか聞かないで
And disregards the rest, hmm
あとは、全部無視するんだ
2)
When I left my home and my family
僕が家と家族から離れ、出て行った時は
I was no more than a boy
一文無しの少年だった
In the company of strangers
旅人の集団の中で
In the quiet of the railway station
静まり返った駅舎の中で
Running scared,
不安でたまらなかった
Laying low, seeking out the poorer quarters *3
身を隠しながら、貧困街をめざした
Where the ragged people go
ぼろをまとった人が行くような場所へ
Looking for the places only they would know
探していた、彼らしか知らないような場所を
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
3)
Asking only workman’s wages
給料がほしくて
I come lookin’ for a job
仕事を捜し歩く
But I get no offers
だけど、まったくお声もかからない
Just a come-on from the whores on 7th Avenue
声をかけてくれるのは、7番街の娼婦たちだけ
I do declare, there were times when I was so lonesome
言っておくけど、何回かだけ、僕がとてもさみしかった時に
I took some comfort there, la la la la la la la
そこで癒されたんだ、ラ ラ ラ ラ ラ ラ ラ
4)
Now the years are rolling by me
時は今も、僕のそばを過ぎ去っている
They are rockin’ evenly
静かに揺れながら
I am older than I once was
僕は歳を重ねてる、かつての自分から
And younger than I’ll be
そしてまだ若い、これからの自分より
That’s not unusual
これって、おかしいことじゃない
No, it isn’t strange
ぜんぜん不思議ではないよ
After changes upon changes
変わった後に、また変わるなんて
We are more or less the same
みんな、だいたいは同じってことさ
After changes we are more or less the same
変わった後は、だいたいは同じってことなんだ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
5)
And I’m laying out my winter clothes and wishing I was gone
冬服を出しながら、帰ってしまえばよかったと思う
Goin’ home
ふるさとへ
Where the New York City winters aren’t bleeding me *4
そこではニューヨークのように、冬が僕を傷つけない
Leading me
お導きを
Going home
ふるさとへ
6)
In the clearing stands a boxer
かたずいたスタンドに立つ、一人のボクサー
And a fighter by his trade *5
彼はプロのファイター
And he carries the reminders
彼は胸に抱えている、記憶を
Of every glove that laid him down
すべてのグローブの、自分を倒した
Or cut him till he cried out in his anger and his shame
また自分を痛めつけた、怒りと屈辱にまみれて泣き叫ぶまで
“I am leaving, I am leaving”,
「やめてくれ、もうやめてくれ」と
But the fighter still remains
しかし、今でもファイターでいる
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ
Lie la lie, lie la lie la lie la lie, la la lie la lie
ライ ラ ライ、ライ ラ ライ ラ ライ ラ ライ、ラ ラ ライ ラ ライ
キーワード
*1 I have squandered my resistance:”squander”「浪費する」、”resistance”「反抗・抵抗」
直訳では「僕は自分の抵抗(力)を無駄にしてきた」から「(僕は)自立できないでいた」としました。
*2 For a pocketful of mumbles:直訳では「ポケットいっぱいの口ごもり」から「いつもごまかしてばかりいて」としました。
*3 quarters:ここでは「25セント硬貨」や「クォーター」ではなく「地区、街区」を意味します。
*4 Where the New York City winters aren’t bleeding me:”the New York City”の前に”as”が省略されていると考え「そこではニューヨークのように、冬が僕を傷つけない」としました。
*5 by his trade:「彼の職業は」から「プロの」としました。
アーティストの紹介
【名 前】Paul Frederic Simon & Art Garfunkel(ポール・フレデリック・サイモン&アート・ガーファンクル)
【生 誕】(Paul Simon) 1941年10月13日 、(Art Garfunkel) 1941年11月5日
【出身地】(Paul Simon) 米国、ニュージャージー州、(Art Garfunkel)米国、ニューヨーク
【概 要】サイモンとガーファンクルは小学校6年生の時に出会い、1957年に「トム&ジェリー」という名前で音楽活動をはじめた。
デビュー曲「ヘイ・スクールガール」は小ヒットしたが、その後お互い大学の学業へ専念したりした。
その後、1963年に「サイモン&ガーファンクル」と名前を改めて再結成し、アルバム「水曜の朝、午前3時」をリリースしたが、ほとんど売れず解散状態となっていた。
しかし、プロデューサーの「トム・ウイルソン」が「サウンド・オブ・サイレンス」にエレキギターやドラムを加えてシングルリリースしたところ、全米1位の大ヒットとなった。
その後は、「スカボロー・フェア」、「ミセス・ロビンソン」などのヒットを続け、アメリカを代表するフォーク、フォークロックのデュオとなった。
1970年に「明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)」を発表し、売り上げも1,000万枚をこえて大ヒットした。
しかし、このアルバムの制作中に音楽性の相違が出て、このアルバムを最後に解散しお互いのソロ活動に入った。
アルバムの紹介
1966年 サイモン&ガーファンクル~パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム / Simon and Garfunkel-Parsley, sage, rosemary and thyme
1966年 サウンド・オブ・サイレンス / Sounds of Silence
1970年 明日に架ける橋 / Bridge Over Troubled Water
1972年 サイモン&ガーファンクル・グレイテスト・ヒッツ/ Simon and Garfunkel Greatest Hits