曲の紹介「Diamonds & Rust ダイヤモンド・アンド・ラスト」
インフォメーション
- 曲名:Diamonds & Rust (ダイアモンズ&ラスト)
- アーティスト:Joan Baez(ジョーン・バエズ)
- 作詞・作曲:Joan Baez(ジョーン・バエズ)
- リリース:1975年4月 16枚目(通算18枚目) アルバム『Diamonds & Rust』のタイトル曲として収録、リリース
- サマリー:
- このアルバムは、ビルボード・トップ LP’s チャートで最高11位を記録した。
- RIAAによりゴールド・ディスクに認定された。
- 「Diamonds & Rust」は、ジョーン・バエズの自作曲として、彼女のキャリアを代表する一曲となった。
- 多くのアーティストにカバーされ、様々なジャンルで再解釈されている。
- 記事参照元:
- 原詞引用元: Diamonds & Rust – Genius
曲について
「Diamonds & Rust」は、ジョーン・バエズが1975年にリリースしたアルバム「Diamonds & Rust」のタイトル曲です。
この曲は、バエズが自ら作詞作曲した楽曲として特に評価されており、彼女のソングライターとしての才能を広く知らしめることとなりました。
それまでのバエズは、主に他のアーティストの曲を歌うシンガーとして知られていましたが、「Diamonds & Rust」の成功により、自作の歌を歌うアーティストとしての地位を確立しました。
この曲は、1960年代初頭にバエズが交際していたボブ・ディランとの過去の関係について、描いていると言われています。
「Diamonds & Rust」の歌詞は、突然かかってきたボブ・ディランからの電話をきっかけに、過去の記憶が鮮やかに蘇る様子を描いています。
バエズは、古い恋人に贈ったカフスボタンを思い出し、記憶が「ダイアモンド(宝石)と錆」をもたらすと表現しています。
これは、美しく輝かしい思い出と、時間とともに風化し、苦い感情を伴う思い出が混在していることを表現しています。
曲の中でバエズは、出会った頃のディランは「青い目をしてた」と表現し、彼女がディランを愛してた様子が伺えます。
一方で、「薄汚れた放浪者だったディランを、聖母のように守った」という歌詞は、ディランへの怒りや、彼に対するバエズの率直な感情を表しているように思えます。
この頃の二人の関係の様子は、2024年公開の映画「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」で、詳細に描かれています。
特にバエズが泊っているホテルの部屋にディランが訪れたシーンは、この「Diamonds & Rust」を題材にしているのではと思われます。
バエズは、ディランとの関係を通じて得た経験を、痛みや後悔も包み隠さず表現しており、聴き手に共感と感動を与えます。
そして「Diamonds & Rust」は、単なる失恋の歌ではなく、時間の経過、記憶の本質、そして人間関係の複雑さを見事に描いた名曲です。
バエズ自身の感情が込められた歌詞と、透明感のある歌声が、聴き手に深い感動を与えます。
曲の動画
以下の動画をアップしています。
- Diamonds & Rust by Joan Baez – Official
- Diamonds & Rust Joan Baez 75th Birthday Celebration by Joan Baez – Official
以下の動画をリンクしています。
- Joan Baez canta “Diamonds And Rust” ao vivo (1978) by Juracy P Castro
歌詞の和訳「Diamonds & Rust ダイヤモンド・アンド・ラスト」
(原詞:太文字)
Diamonds & Rust
Well, I’ll be damned
ああ、私は呪われてる
Here comes your ghost again
またあなたの亡霊が現れた
But that’s not unusual
だけど変わったことじゃない
It’s just that the moon is full
ちょうど満月に
And you happened to call
あなたが電話をしてきて
And here I sit
そして私がここに座ってる
Hand on the telephone
電話を切らずにいる
Hearing a voice I’d known
覚えのある声を聞きながら
A couple of light years ago
数光年も前から知ってる
Heading straight for a fall
どん底に落ちていってる
2)
As I remember your eyes
覚えているのはあなたの瞳
Were bluer than robin’s eggs *1
コマドリの卵よりも青かった
My poetry was lousy, you said
私の詩はひどいと、あなたは言った
Where are you calling from?
どこから電話してるの?
A booth in the Midwest
中西部のボックスから
Ten years ago
10年前に
I bought you some cufflinks
私はあなたにカフスボタンを買って
You brought me something
あなたは私に何か持ってきた
We both know what memories can bring
私たち二人は気づいてる、思い出がもたらせるもの
They bring diamonds and rust
それはダイヤモンドと錆だと
3)
Well you burst on the scene *2
さてあなたは突然、私の前に現れた
Already a legend
もう今では伝説
The unwashed phenomenon *3
薄汚れた奇才で
The original vagabond
放浪者そのもの
You strayed into my arms
私の腕の中に迷い込み
And there you stayed
そのまま居座った
Temporarily lost at sea
たまたま海に迷い込み
The Madonna was yours for free
聖母はあなたのものになった
Yes, the girl on the half-shell *4
そう、貝に立つ少女が
Could keep you unharmed
あなたを無事に守り続けた
Now I see you standing with brown leaves
あなたが枯葉と立っているのを見てる
Falling all around and snow in your hair
それはまわり中に、髪には雪が落ちている
Now you’re smiling out the window
あなたは微笑んでる、窓の外で
Of that crummy hotel over Washington Square
ワシントン・スクエアの向こうの粗末なホテルの
Our breath comes out white clouds
私たちの息が白い雲となり
Mingles and hangs in the air
交わりあって宙に舞う
Speaking strictly for me
私とだけ話しながら
We both could have died then and there
私たち二人、あの時あそこで死んでいたのかも
4)
Now you’re telling me, you’re not nostalgic
今あなたは言ってる、懐かしんでるんじゃないと
Then give me another word for it
では別の言い方をしてよ
You were so good with words
あなたがとても上手かったのは言葉と
And at keeping things vague
物事を曖昧にしておくこと
‘Cause I need some of that vagueness now
だから今は私にその曖昧さが必要
It’s all come back too clearly
鮮明に蘇るすべてのことに
Yes, I loved you dearly
そう、私はほんとうに愛してた
And if you’re offering me diamonds and rust
もし私にダイヤモンドと錆を勧めているのなら
I’ve already paid
もうとっくに支払いは済ませた
キーワード
- *1. robin:ヨーロッパコマドリ、コマツグミ
- *2. burst on the scene
- burst on:~の眼前に突然(急に)現れる、聞こえてくる
- scene:「場面、光景」ですが、文脈から「~の前に」としました。
- *3. phenomenon:「現象」「事象」「珍しい事」「奇才」「逸材」「驚異的な人」
- *4. the girl on the half-shell:「(二枚)貝の半分に乗っている少女」は、ルネッサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェッリが描いた「ヴィーナスの誕生」を指していると思われます。
この絵は、ギリシア神話で語られている通り、女神ヴィーナス(アプロディーテー)が、成熟した大人の女性として、海より誕生し出現した様を描いています。
アーティストの紹介「Joan Baez ジョーン・バエズ」

インフォメーション
- 名前: Joan Baez(ジョーン・バエズ)
- 出生名: Joan Chandos Baez(ジョーン・チャンドス・バエズ)
- 生誕: 1941年1月9日-
- 出身地: アメリカ ニューヨーク州スタテンアイランド
- サマリー:
- ジョーン・バエズは、アメリカのフォークシンガー、ソングライター、ミュージシャンで活動家
- 彼女の音楽は抗議や社会正義のテーマを含み、60年代のカウンターカルチャー運動の象徴的存在となった。
- 2017年にロックの殿堂入りを果たし、2021年にはケネディ・センター名誉賞を受賞した。
- 2019年に「Fare Thee Well Tour」で音楽活動から引退し、2025年現在は肖像画の制作に専念している。
- 公式サイト:http://www.joanbaez.com/
- YouTube オフィシャル・サイト:www.youtube.com/@JoanBaezOfficial
アーティストの軌跡
ジョーン・バエズは、透明感のある美しい声と社会正義への揺るぎない信念で、フォークミュージックの世界を超えて世代を超えた影響力を持つアーティストとして知られています。
彼女の音楽と活動は、アメリカの文化的・政治的風景に深く刻まれています。
バエズはメキシコ出身の物理学者アルバート・バエズとスコットランド出身のジョーン・チャンドス・バエズの間に生まれました。
家族はクエーカー教徒に改宗し、この背景が彼女の平和主義と社会問題への取り組みに影響を与えました。若い頃から人種差別を経験したバエズは、早くから社会的な大義に関わるようになりました。
13歳の時、伯母に連れられてピート・シーガーのコンサートに行ったことがきっかけで音楽に目覚めました。高校卒業後、家族とボストンに移り住み、そこで彼女はケンブリッジのクラブ47などで演奏を始めました。
1959年のニューポート・フォーク・フェスティバルでのパフォーマンスが注目され、翌年にはヴァンガード・レコードと契約して「Joan Baez」というデビューアルバムをリリースしました。
1960年代前半には「Joan Baez, Vol. 2」や「Joan Baez in Concert」などのアルバムがゴールドディスクを獲得し、「フォークの女王」として名声を確立しました。
この頃、彼女はボブ・ディランと出会い、彼の曲を早くから取り上げたことでディランの知名度向上に貢献しました。
二人は1960年代に恋愛関係にあり、その関係はのちに彼女の代表曲「Diamonds & Rust」の題材となりました。
バエズは音楽活動と並行して公民権運動や反戦運動にも積極的に参加しました。
1963年のワシントン大行進では「We Shall Overcome」を歌い、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアの「I Have a Dream」演説の直前に演奏しました。
ベトナム戦争中には徴兵拒否を支持し、所得税の一部支払いを拒否するなど、反戦の姿勢を明確に示しました。
1970年代には「Diamonds & Rust」を含むアルバムをリリースし、この曲は彼女の最も有名な自作曲となりました。
その後も「Gulf Winds」「Recently」など多くのアルバムを発表し続け、時代と共に自身の音楽性を発展させてきました。
2008年にはカントリーの要素を取り入れた「Day After Tomorrow」、2018年には引退前の最後のスタジオアルバム「Whistle Down the Wind」をリリースしました。
2019年には「Fare Thee Well Tour」と名付けられた最後のワールドツアーを行い、同年7月28日にスペイン・マドリードのTeatro Realで最終公演を行いました。
バエズは2017年に「ロックの殿堂」入りを果たし、2021年には「ケネディ・センター名誉賞」を受賞するなど、その功績は広く認められています。現在は音楽活動から引退し、肖像画の制作に専念しているといいます。
2023年には彼女の人生と音楽キャリアを振り返るドキュメンタリー映画「Joan Baez: I Am a Noise」が公開され、彼女の個人的な苦闘、政治的活動、そしてボブ・ディランとの関係などについて率直に語っています。
ジョーン・バエズは、単に優れたミュージシャンであるだけでなく、社会変革のための声として、60年以上にわたって人々の心に訴えかけてきました。彼女の音楽と活動は、時代を超えて世界中の人々に影響を与え続けています。
代表曲:
1963年 We Shall Overcome
1975年 Diamonds & Rust
1971年 The Night They Drove Old Dixie Down(カバー)
ディスコグラフィー
- スタジオ・アルバム
- 『ジョーン・バエズ』 – Joan Baez (1960年、Vanguard) ※旧邦題『ジョーン・バエズ・ファースト』
- 『ジョーン・バエズ 第2集』 – Joan Baez, Vol. 2 (1961年、Vanguard)
- 『5』 – Joan Baez/5 (1964年、Vanguard)
- 『フェアウェル・アンジェリーナ』 – Farewell, Angelina (1965年、Vanguard)
- 『ノエル』 – Noël (1966年、Vanguard)
- 『ジョーン』 – Joan (1967年、Vanguard)
- 『バプティズム – われらの時代の旅』 – Baptism: A Journey Through Our Time (1968年、Vanguard)
- 『ボブ・ディランを歌う』 – Any Day Now (1968年、Vanguard)
- 『獄中の夫に捧ぐ』 – David’s Album (1969年、Vanguard)
- 『自由と平和と』 – One Day at a Time (1970年、Vanguard)
- 『心、愛、祈り』 – Blessed Are… (1971年、Vanguard)
- 『カム・フロム・ザ・シャドーズ – バングラデシュの歌』 – Come from the Shadows (1972年、A&M)
- 『戦争が終ったとき』 – Where Are You Now, My Son? (1973年、A&M)
- 『ここに人生が』 – Gracias a la Vida (1974年、A&M)
- 『ダイアモンド・アンド・ラスト』 – Diamonds & Rust (1975年、A&M)
- 『ガルフ・ウィンズ』 – Gulf Winds (1976年、A&M)
- 『風まかせ』 – Blowin’ Away (1977年、CBS)
- Honest Lullaby (1979年、CBS)
- 『リーセントリー』 – Recently (1987年、Gold Castle)
- 『スピーキング・オブ・ドリームス』 – Speaking of Dreams (1989年、Gold Castle)
- 『プレイ・ミー・バックワーズ』 – Play Me Backwards (1992年、Virgin)
- Gone from Danger (1997年、Guardian)
- Dark Chords on a Big Guitar (2003年、Koch)
- Day After Tomorrow (2008年、Proper)
- Whistle Down the Wind (2018年、Proper)
- ライブ・アルバム
- 『イン・コンサート』 – Joan Baez in Concert (1962年、Vanguard)
- 『イン・コンサート・パート2』 – Joan Baez in Concert, Part 2 (1963年、Vanguard)
- Joan Baez in San Francisco (1964年、Fantasy)
- 『ライヴ!!』 – Joan Baez In Italy (1969年、Vanguard)
- 『ライヴ・イン・ジャパン』 – Live in Japan (1973年、Vanguard)
- 『ジョーン・バエズ・イン・コンサート』 – From Every Stage (1976年、A&M)
- European Tour (1980年、CBS)
- Live Europe ’83 (1984年、Gamma)
- Diamonds & Rust in the Bullring (1988年、Gold Castle)
- Ring Them Bells (1995年、Guardian)
- 『ライヴ・アット・ニューポート1963-1965』 – Live at Newport (1996年、Vanguard)
- Bowery Songs (2005年、Proper)
- Ring Them Bells (2007年、Proper)
- Diamantes (2015年、Proper)
- 75th Birthday Celebration (2016年、Razor & Tie)
- Live At Woodstock (2019年、Craft Recordings)
- サウンドトラック・アルバム
- 『死刑台のメロディ』 – Sacco & Vanzetti (1971年、RCA Victor) ※映画『死刑台のメロディ』サウンドトラック
- 『心の旅』 – Carry It On (1971年、Vanguard) ※映画『ジョーン・バエズ 心の旅』サウンドトラック
- Silent Running (1972年、Decca) ※映画『サイレント・ランニング』サウンドトラック
- How Sweet the Sound (2009年、Razor & Tie)