曲の紹介「Acadian Driftwood アカディアの流木」
インフォメーション
- 曲名:Acadian Driftwood (アカディア/アケイディアの流木)
- アーティスト:The Band(ザ・バンド)
- 作詞・作曲:Robbie Robertson(ロビー・ロバートソン)
- リリース:1975年11月
- サマリー:1975年リリースされたThe Bandの6枚目のアルバム「Northern Lights-Southern Cross」(日本語名:南十字星)に収録された曲
- 記事参照元:
- Acadian Driftwood -Wikipedia
- ザ・バンド-Wikipedia
- 原詞引用元:Acadian Driftwood (Genius)
曲について
「アカディア/アケイディアの流木」は、アルバム「Northern Lights-Southern Cross(南十字星)」に収録されています。
このアルバムには、当サイトでもご紹介しています”It Makes No Difference“、”Ophelia“が収録されています。
「アカディアの流木」は、とても好きな曲でしたが、歌詞の内容を知りませんでした。
訳してはじめて、その歴史的な史実にもとずいた歌詞に驚きました。
曲の舞台は、17世紀に北アメリカで起きたフレンチ・インディアン戦争です。
彼らの曲で「The Night They Drove Old Dixie Down」は南北戦争を舞台にしていますが、この「Acadian Driftwood」は、それより1世紀早い植民地時代を舞台にしています。
ヨーロッパでは七年戦争(1756年~63年)が繰り広げられており、北アメリカではフランス、イギリスの植民地争いの戦争、フレンチ・インディアン戦争(1754年-1763年)が起きました。
先住民のインディアン(参加は部族による)とフランス軍の同盟軍と、イギリス軍とアメリカ植民地軍の連合軍が北米で戦い、Acadia(アカディアまたはアケイディア:現在のカナダのノバスコシア州と北米東部大西洋岸のアメリカ メイン州あたりの古い地名)を舞台にしていると思われます。(引用:エイブラハム平原の戦い / アカディ-Wikipedia)
主人公はおそらく先住民のインディアンで、彼はイギリス連合軍と戦いましたが、エイブラハム平原の敗北(またはケベックの戦いといい、この戦争の中枢の戦闘)により、故郷にも帰れない状況となりました。
4番の歌詞で「国境の南に住む親せき」から、手紙でこちらに移住するように勧められています。
おそらく国境の南とは8番の歌詞にも出てきますが、もともとフランス植民地領だった、中南部のミシシッピ川流域のニュー・オーリンズあたりをさしているようです。
しかし、1763年のパリ条約でフランスは北米のほとんどの植民地を失うことから、ここへ移住した主人公一家は、再び苦難に合います。
しかし、サトウキビ畑が洪水でだめになったことを契機に、故郷のアルカディアへ戻る決心をしてこの曲は終わります。
この曲のストーリーは、ロビー・ロバートソンが作ったフィクションですが、実際の舞台は本当に起きた戦争というノン・フィクションなので、とても迫るものがあります。
今でも、同じような戦争がおき、犠牲となる人が必ずいます。この曲は、そんな哀しい現実を訴えているように思えます。
The Bandの名曲の一つだと思います。ぜひ、聴いてみてください。
歌詞の和訳「Acadian Driftwood アカディアの流木」
(原詞:太文字)
Acadian Driftwood
The war was over and the spirit was broken
戦いは終わり、魂は打ち砕かれた
The hills were smokin’ as the men withdrew
男たちが撤退する間、丘は煙っていた
We stood on the cliffs and watched the ships
俺たちは崖に立ち、船を見てた
Slowly sinking to their rendezvous *1
落ち合う場所でゆっくりと沈んでいくのを
2)
They signed a treaty and our homes were taken
やつらは条約に署名し、俺たちの家は奪われた
Loved ones forsaken, they didn’t give a damn
愛する者は見捨てられ、やつらは気にも留めなかった
Try to raise a family, end up an enemy
家族を育んでも、結局敵になってしまう
Over what went down on the Plains of Abraham *2
エイブラハム平原で起きたことで
Acadian driftwood, gypsy tailwind *3
アカディアの流木、ジプシーの追い風
They call my home the land of snow
俺の故郷は、雪の地と呼ばれる
Canadian cold front movin’ in
カナダの寒冷前線が押し寄せてくる
What a way to ride, oh what a way to go
なんて走りだ、ああ、なんて進み方なんだ
3)
Then some returned to the motherland
その後、ある者は故郷へ帰った
The high command had them cast away
上層部は彼らを追放した
Some stayed on to finish what they started
ある者は始めたことを終結するために残った
They never parted, they’re just built that way
彼らは決して離れなかった、まさに道を築いたんだ
4)
We had kin livin’ south of the border
国境の南に親戚が住んでいた
They’re a little older and they been around *4
彼らは少し年上でずっといる
They wrote in a letter life is a whole lot better
彼らは、人生がもっとよくなると手紙をよこしてきた
So pull up your stakes, children, and come on down *5
だからそこを引き払って、子たちよ、さあ下りておいでと
Acadian driftwood, gypsy tailwind
アカディアの流木、ジプシーの追い風
They call my home the land of snow
俺の故郷は、雪の地と呼ばれる
Canadian cold front movin’ in
カナダの寒冷前線が近ずいてくる
What a way to ride, oh what a way to go
なんて走りだ、ああ、なんて進み方なんだ
5)
Fifty under zero when the day became a threat
零下50度、その日は脅威となった
My clothes were wet and I was drenched to the bone
服は濡れ、全身びしょ濡れになった
Then out ice fishin’, too much repetition
そして氷上釣り、ただ繰り返すばかりで
Make a man want to leave the only home he’s known
馴染んだ唯一の故郷を離れたくなる
6)
Sailed out of the Gulf, headed for St. Pierre *6
湾を出てサンピエール島へ向かった
Nothing to declare, all we had was gone
申告するものは何もない、すべてのものは失った
Broke down along the coast, what hurt the most
海岸沿いで故障した、一番つらかったのは
When the people there said, “you better keep movin’ on”
そこの人たちから言われたこと「進み続けたほうがいい」と
Acadian driftwood, gypsy tailwind
アカディアの流木、ジプシーの追い風
They call my home the land of snow
俺の故郷は、雪の地と呼ばれる
Canadian cold front movin’ in
カナダの寒冷前線が近ずいてくる
What a way to ride, oh what a way to go
なんて走りだ、ああ、なんて進み方なんだ
7)
Everlastin’ summer filled with ill-contempt *7
終わりのない夏は不満を募らせた
This government had us walkin’ in chains
この政府は俺たちを鎖につないで歩かせた
This isn’t my turn, this isn’t my season
ここは俺の出番じゃないし、俺の時期じゃない
Can’t think of one good reason to remain
ここに残る理由など一つも思いつかない
8)
We worked in the sugar fields up from New Orleans
俺たちはニューオーリンズから上流のサトウキビ畑で働いた
It was evergreen up until the flood
そこは洪水までは常緑樹で覆われていた
You could call it an omen, point you where you’re goin’
それはお告げとも呼べるもので、行く先を示してくれた
Set my compass North, I got winter in my blood
羅針盤を北へ向けたら、俺の血の中に冬が流れた
Acadian driftwood, gypsy tailwind
アカディアの流木、ジプシーの追い風
They call my home the land of snow
俺の故郷は、雪の地と呼ばれる
Canadian cold front movin’ in
カナダの寒冷前線が近ずいてくる
What a way to ride, oh what a way to go
なんて走りだ、ああ、なんて進み方なんだ
Sais tu, Acadie j’ai le mal du pays
わかるだろ、アカディア、俺は故郷が恋しい
Ta neige, Acadie, fait des larmes au soleil
お前の雪、アカディア、太陽のもとでの涙
J’arrive Acadie, teedle um, teedle um, teedle oo *8
今行くよアカディア、唄って、唄って、唄って
J’arrive Acadie, teedle um, teedle um, teedle oo
今行くよアカディア、唄って、唄って、唄って
J’arrive Acadie, teedle um, teedle um, teedle oo
今行くよアカディア、唄って、唄って、唄って
J’arrive Acadie, サンedle um, teedle um, teedle oo
今行くよアカディア、唄って、唄って、唄って
J’arrive Acadie, teedle um, teedle um, teedle oo
今行くよアカディア、唄って、唄って、唄って
キーワード
- *1. to their rendezvous 「(船が)落ち合う場所で」とは、「船が、崖からみている主人公たちを、救援するために待ち合わせていた場所」と解しました。
- *2. the Plains of Abraham エイブラハム平原の戦い(またはケベックの戦い)という、北アメリカのフレンチ・インディアン戦争の中枢となった当時の地名(引用:エイブラハム平原の戦い-Wikipedia)
- *3. Acadian アカディ(英:Acadia、仏:Acadie)は現在のカナダ ノバスコシア州と北米東部大西洋岸のアメリカ 州の古い地名で、アカディアン/アケイディアは「アカディの~」「アカディ人」をいう。(引用:アカディ-Wikipedia)
- *4. been around: 「そばにいる」「周辺の」「ずっといる」などの意味がありますが、「ここでは「ずっといる」としました。
- *5. pull up your stakes: “pull up stakes”「(土地の境界線の)杭を引き抜く」「土地を離れる」から「引き払って」としました。
- *6. St. Pierre サンピエール島・ミクロン島(北アメリカにある元フランス領の群島)
- *7. “Everlastin’” “ill-contempt” :
- “everlast”は「永遠の」、「(たえまなく)続く」
- “ill-contempt”は「軽蔑、不満、不快感」を表す。
- *8. “J’arrive” “teedle” :
- “J’arrive”は、フランス語で「今行くよ」
- “teedle”は、意味がない語のようなので、英語の「tweedle」の意味で、「唄って」としました。
アーティストの紹介「The Band ザ・バンド」
インフォメーション
- 名前:The Band(ザ・バンド)
- オリジナル・メンバー:
- ロビー・ロバートソン(Gt.)
- リチャード・マニュエル(KB.)
- ガース・ハドソン(KB.&アコーディオン&SAX),
- リック・ダンコ(Bass)
- リヴォン・ヘルム(Dr.&Vo.)
- ※アメリカ出身はリヴォン・ヘルムのみで、他の4人はカナダ出身
- 活動期間:1967-1976年(メンバーチェンジにて1983-1999年)
- 結成地:アメリカ
- サマリー:ザ・バンドは、カナダでロニー・ホーキンス(アメリカのロックンローラー)のバックバンド(ザ・ホークス)として結成され、1960年代から1970年代にかけてアメリカで活躍したロックバンドで、ボブ・ディランのバックバンドとしての活動を経て、独自の音楽スタイルを確立した。
アーティストの軌跡
「ザ・バンド」はアメリカのロックンローラー、ロニー・ホーキンスのバックバンド(ホークス)として活動していましたが、その後ボブ・ディランのマネージャー(アルバート・グロスマン)の目に留まり、ボブ・ディランのバックバンドとして活動を始めました。
この時期、ディランはフォーク路線からエレキギターを使用してフォークロックへ転換しており、コンサートツアーの行く先々で、従来のフォークファンから大ブーイングを受けました。
これは、「ロイヤル・アルバート・ホール」での「ライク・ア・ローリングストーン」の動画で様子が伺えますが、この演奏が逆に彼らの知名度を高めました。
その後彼らは、ディランの交通事故のアクシデントもあり、ディランの誘いでウッド・ストックに「ビッグ・ピンク」と名づけられた家に住みつきました。
そこで行われたディランとのセッションは、ロック史上初の海賊盤「Great White Wonder」として流出し、1975年に「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」としてリリースされました。
1968年に「ザ・バンド」と改名し、「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」をリリースし、バンドデビューを果たしました。
音楽性はロックにアメリカのルーツ音楽のカントリーやR&Bの要素を取り入れ、高い評価を受け、また当時より多くのミュージシャンからも尊敬を集めました。
特にエリック・クラプトンは、この「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」に衝撃を受け、クリームを去った原因にもなったとも言われています。
1989年にカナダのCanadian Music Hall of Fame殿堂入り、1994年にロックの殿堂入りしています。
そして、ローリング・ストーン誌選定の「歴史上最も偉大な100組のグループ」において、第50位にクレジットされました。
ディスコグラフィー
- オリジナル・アルバム
- 1968年 ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク Music From Big Pink (ゴールドディスク)
- 1969年 ザ・バンド The Band (プラチナディスク)
- 1970年 ステージ・フライト Stage Fright (ゴールドディスク)
- 1971年 カフーツ Cahoots
- 1972年 ロック・オブ・エイジズ Rock Of Ages (ゴールドディスク)
- 1973年 ムーンドッグ・マチネー Moondog Matinee
- 1975年 南十字星 Northern Lights – Southern Cross
- 1977年 アイランド Islands
- 1978年 ラスト・ワルツ The Last Waltz
- 再結成後
- 1993年 ジェリコ Jericho
- 1996年 ハイ・オン・ザ・ホッグ High On The Hog
- 1998年 Jubilation(※日本未発売)
- 編集盤、ベスト・アルバム
- 1976年 軌跡 The Best Of The Band (ゴールドディスク)
- 1978年 アンソロジー Anthology
- 1989年 トゥ・キングダム・カム To Kingdom Come
- 1995年 ライヴ・アット・ワトキンス・グレン Live at Watkins Glen
- 1999年 ※日本未発売 The Best of The Band, Vol. II
- 2000年 グレイテスト・ヒット Greatest Hits
- ボックス・セット
- 1994年 グレイト・ディバイド・ボックス Across The Great Divide
- 2002年 ラスト・ワルツ完全版 The Last Waltz
- 2005年 ザ・バンド・ボックス ミュージカル・ヒストリー A Musical History
- ボブ・ディランと共演
- ブロンド・オン・ブロンド – Blonde On Blonde(1966年)
- セルフ・ポートレイト – Self Portlate(1970年)
- ウディ・ガスリー・メモリアル・コンサート – A Tribute To Woody Guthrie, Part 1(1972年)
- プラネット・ウェイヴズ – Planet Waves(1974年)
- 偉大なる復活 – Before the Flood(1974年)(プラチナディスク)
- 地下室(ザ・ベースメント・テープス) – The Basement Tapes(1975年)(ゴールドディスク)
- ロイヤル・アルバート・ホール(ブートレッグ・シリーズ第4集) – The Bootleg Series Vol. 4: Bob Dylan Live 1966, The “Royal Albert Hall” Concert(1998年、リヴォン・ヘルムを除く)
*引用元:ザ・バンド-Wikipedia
アルバム
1968年 ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク / Music from Big Pink
1969年 ザ・バンド / The Band
1970年 ステージ・フライト / Stage Fright
1972年 ロック・オブ・エイジズ / Rock Of Ages
1975年 南十字星 / Northern Lights – Southern Cross
ライブ・アルバム
1974年 偉大なる復活 / Before the Flood
1978年 ラスト・ワルツ / The Last Waltz
ベスト・アルバム
2000年 The Band Greatest Hits