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曲の紹介|Born in the U.S.A. ボーン・イン・ザ・U.S.A.
- 曲名:Born in the U.S.A.(ボーン・イン・ザ・U.S.A.)
- アーティスト:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- 作詞・作曲:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- サマリー:
- この曲は、1984年にリリースされたアルバム「Born in the U.S.A.」のタイトル曲で、彼の代表曲の一つとなった。
- アルバムはビルボードヒットチャートで全米1位を獲得した。
- ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)では275位にランクされている。
- 記事参照元:
- Born in the U.S.A. (song)-Wikipedia
- Bruce Springsteen-Wikipedia
- 歌詞引用元:Born in the U.S.A.-GENUIN
曲について
「Born in the U.S.A.」は、共和党の右派政治家だったロナルド・レーガンが彼の演説で取り上げて賞賛したように、一般的に「アメリカで生まれた」ことの誇り、プライドを表現しているととらえられていました。
しかし、スプリングスティーン自身が込めた意図はまったく異なります。
曲の本質は、ベトナム戦争から帰還した兵士が直面した現実——帰還後も社会に受け入れられず、孤立し、疎外感と怒り、苦しみを抱えて生きなければならなかった当時のアメリカ社会への痛烈な批判です。
曲の印象的で力強いサビと対照的に、歌詞の主人公は戦争によって人生が大きく狂わされ、帰国しても温かい居場所を与えられませんでした。
ちなみに、ボブ・ディランも「Knockin’ on Heaven’s Door」(1973年)で、同様にベトナム帰還兵の苦悩や当時のアメリカ社会の切なさを描いたと言われています。
確かに、ベトナム戦争で戦死した数より、帰還兵が自殺した数の方が上回っていたそうです。
「Born in the U.S.A.」の主人公は、荒廃した街に生まれ、幼いころから貧困と差別の中で育ち、故郷から追い出されるようにベトナム戦争へと送り出されます。
そこで国家のための戦争に駆り出され、兄弟は戦死し、彼自身は生きて帰還しますが、彼を待っていたのは温かい歓迎ではなく冷たい社会の目でした。
工場に職を求めても、「ベトナム帰還兵」であるがゆえに拒絶されてしまいます。
貧しい環境に生まれた者にとって、人生を好転させるチャンスは与えられず、むしろ過酷な運命に翻弄される——その構造的な不公正を、スプリングスティーンはこの曲で告発しているのです。
「Born in the U.S.A.」というフレーズには、力強い響きと共に「こんな現実を背負わされる国に生まれたのだ」という苦いアイロニーと悲しみが込められている、そんな風に聴こえてきます。
曲の動画
以下の動画をアップしています。
- Born in the U.S.A.-Bruce Springsteen公式チャンネル
- Bruce Springsteen – Born in the U.S.A. (Official Video)
- Bruce Springsteen – Born In The U.S.A. (Live)


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歌詞の和訳|Born in the U.S.A. ボーン・イン・ザ・U.S.A.
(原詞:太文字)
Born in the U.S.A.
Born down in a dead man’s town
死者の街で産み落とされ
The first kick I took was when I hit the ground *1
最初にくらった一蹴りは精一杯頑張ってた時だった
You end up like a dog that’s been beat too much
何度も打たれ続けて所詮犬みたいに終わるんだ
Till you spend half your life just covering up
人生の半分をただ覆い隠すことだけに費やして
Born in the U.S.A.
アメリカで生まれた
I was born in the U.S.A.
俺はアメリカで生まれた
I was born in the U.S.A.
俺はアメリカで生まれた
Born in the U.S.A., now
アメリカで生まれた、今では
2)
Got in a little hometown jam *2
故郷の小さなもめごとに巻き込まれた
So they put a rifle in my hand
連中は俺にライフルを持たせ
Sent me off to a foreign land
外国の地へ俺を送り出した
To go and kill the yellow man
黄色いやつらを行って殺してこいと
Born in the U.S.A.
アメリカで生まれた
I was born in the U.S.A.
俺はアメリカで生まれた
Born in the U.S.A.
アメリカで生まれた
I was born in the U.S.A.
俺はアメリカで生まれた
3)
Come back home to the refinery
故郷に戻り精錬所に行くと
Hiring man says, “Son, if it was up to me”
管理者が言う「君ね、私だったら」
Went down to see my V.A. man *3
退役軍人局の担当者に会いに行ったよ
He said, “Son, don’t you understand now?”
彼は言った「君、言ってる意味わからないのか?」
4)
I had a brother at Khe Sanh *4
俺の兄貴はケサンにいた
Fighting off the Viet Cong *5
ベトコンと戦っていた
They’re still there, he’s all gone
奴らは今もそこにいるが、彼はもうどこにもいない
He had a woman he loved in Saigon
彼にはサイゴンに愛する彼女がいた
I got a picture of him in her arms now
彼女の腕に抱かれてる彼の写真を手に入れた
5)
Down in the shadow of the penitentiary
刑務所の闇に身を落とし
Out by the gas fires of the refinery
精錬所のガス火で抜け出した
And I’m ten years burning down the road
10年間焼き尽くされる道にいた
Nowhere to run, ain’t got nowhere to go
どこにも逃げれないし、どこにも行き場所はない
Born in the U.S.A.
アメリカで生まれた
I was born in the U.S.A, now
俺はアメリカで生まれた
I was born in the U.S.A.
俺はアメリカで生まれた
I’m a long gone daddy in the U.S.A, now *6
俺はアメリカで居場所のない男、今では
Born in the U.S.A
アメリカで生まれた
Born in the U.S.A
アメリカで生まれた
Born in the U.S.A
アメリカで生まれた
I’m a cool, rocking daddy in the U.S.A, now *7
俺はアメリカで粋で、イケてる男、今では
キーワード
- *1 The first kick I took was when I hit the ground:
- “kick”を「ダメージ」の意味で、「くらった一発」としました。
- “hit the ground”は「地に落ちる、堕落する」ではなく、「全力で取り組む」意味で「精一杯頑張って」としました。
- *2 Got in a little hometown jam:”in a jam”「すごく困っている」「行き詰まっている」から「もめごとに巻き込まれる」にしました。
- *3 V.A. man:Veterans’ Administrationの略で「 在郷軍人局」「退役軍人局」
- *4 Khe Sanh:「ケサンの戦い」と呼ばれる戦いが行われた地名で、この戦いがアメリカに大きなダメージを与えた。
- *5 Viet Cong:「ベトコン」南ベトナム解放民族戦線の兵士の俗称(ベトナム戦争当時)
- *6 a long gone daddy:ハンク・ウィリアムズの楽曲「I’m a Long Gone Daddy」を引用しています。楽曲の意味では「長い間去ってしまった男」なので、ベトナム帰還兵の主人公がもう戻れないほど社会から離れてしまったという意味で、「(アメリカでは)居場所のない男」としました。
- *7 rocking daddy:ハウリング・ウルフの楽曲「Rockin’ Daddy」を引用しているのではと思います。
- 「cool」:印象的でスタイリッシュであることを表すスラング
- 「rocking」:ブルースやロック音楽のコンテキストでは、活気があって、エンターテイニングな、または性的に強力であることを意味するスラング
- 「daddy」:この文脈では実際の父親ではなく、自信に満ちた男性を指す言葉(しばしば性的な含みもある)
- 以上のワードの意味から、主人公は「cool」でも「rocking」でもなく、国に仕えたにもかかわらず失業し見捨てられた感覚を持っているので、大きな皮肉をこめて「俺はアメリカで粋で、イケてる男」としました。
アーティストの紹介|Bruce Springsteen ブルース・スプリングスティーン
- 名前:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- (出生名:ブルース・フレデリック・ジョセフ・スプリングスティーン)
- 生誕:1949/9/23 –
- 出身地:アメリカ ニュージャージー州ロングブランチ
- サマリー:ブルース・スプリングスティーン(1949年9月23日生まれ)は、アメリカのロック音楽界を代表するミュージシャン。ニュージャージー州出身で、「ザ・ボス」の愛称で親しまれている。
アーティストの軌跡
ブルース・スプリングスティーンは、幼少期にエルビス・プレスリーに憧れて10歳でギターを手にし、地元ニュージャージーでアマチュアバンドを結成して音楽活動をスタートさせました。
1973年1月、CBSレコードのオーディションをきっかけに、アルバム『アズベリー・パークからの挨拶(Greetings from Asbury Park, N.J.)』でレコードデビューを果たします。
当初は「第二のディラン」とも呼ばれていましたが、本人はあくまでロックンロールの道を志向し続けていました。
同年9月には2枚目のアルバム『青春の叫び(The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle)』を発表します。
転機となったのは、ロック評論家ジョン・ランドーをプロデューサーに迎え、1975年8月にリリースした『明日なき暴走(Born to Run)』。
このアルバムは大ヒットし、タイトル曲「Born to Run」はローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)」で21位にランクインするなど、彼の名を一躍世界に広めました。
1980年には5枚目のアルバム『ザ・リバー(The River)』を発表し、初めて全米アルバムチャートの1位を獲得します。
収録曲の「ハングリー・ハート(Hungry Heart)」や表題曲「ザ・リバー(The River)」は話題となり、1年以上にわたるワールドツアーも成功を収めました。
その後、1984年6月にリリースした7枚目のアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.(Born in the U.S.A.)』は大ヒットし、長期にわたりアルバムチャート1位の座を守りました。
タイトル曲は、当初多くの人に「アメリカで生まれた誇り」を歌うものと解釈され、当時のレーガン大統領の演説でも引用されました。
しかし、実際にはベトナム戦争帰還兵が味わった苦悩や、冷淡な社会への怒りを込めており、スプリングスティーン自身はアメリカの矛盾を訴えた作品でした。
1999年にはロックの殿堂入りを果たし、2001年にアメリカ同時多発テロの犠牲者に捧げたアルバム『ザ・ライジング(The Rising)』をリリース。
音楽活動の傍ら、政治的発言も積極的に行い、2004年の大統領選挙では反ブッシュの立場を鮮明にするなど、単なるミュージシャンの枠を超えて社会的影響力を持つ存在となっています。
近年も精力的に音楽活動を続ける中、2021年には自身の全楽曲の権利をソニー・ミュージックエンタテインメントに売却。
報道によれば、売却額は5億ドル以上とされ、これは1人のアーティストとして過去最高額とも言われています。
スプリングスティーンは米国で7,100万枚以上、世界で1億4,000万枚以上のアルバムを販売し、世界で最も売れているアーティストの一人となっています。
20のグラミー賞、2つのゴールデングローブ賞、アカデミー賞、特別トニー賞など数々の栄誉を受賞しているスプリングスティーンは、2010年にローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大なアーティスト100人」で23位にランクされ、「ロックンロールの化身」と評されました。
ディスコグラフィ
代表曲:
- 1975 Born to Run
- 1980 The River
- 1980 Hungry Heart
- 1982 Atlantic City
- 1984 Dancing in the Dark
- 1984 Born in the U.S.A.
- 1984 Glory Days
- 1985 I’m on Fire
- 1987 Brilliant Disguise
- 1994 Streets of Philadelphia
- 2002 The Rising
- 2007 Radio Nowhere
アルバムの紹介
1973年 青春の叫び / The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle
1975年 明日なき暴走 / Born To Run
1978年 闇に吠える街 / Darkness On The Edge Of Town
1980年 ザ・リバー / The River
1982年 ネブラスカ / Nebraska
1984年 ボーン・イン・ザ・U.S.A. / Born In The U.S.A.