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曲の紹介|Born to Run 明日なき暴走
- 曲名:Born to Run(明日なき暴走)
- アーティスト:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- 作詞・作曲:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- サマリー:
- 1975年にリリースされた3枚目のアルバム「Born to Run」のタイトル曲。
- ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)では21位にランクされている。
- 記事参照元:
- Born to Run (Bruce Springsteen song)-Wikipedia
- Bruce Springsteen-Wikipedia
- 歌詞引用元:Born to Run -GENIUS
曲について
「Born to Run」は、Springsteenの音楽的転機となり、商業的な成功への道を開いた重要な作品です。
Springsteenは自身のキャリア初期、批評家からは称賛されていたものの商業的には失敗していた2枚のアルバムを経て、メインストリームへの突破口を見出そうとしていました。
制作には非常に長い時間が費やされ、タイトル曲”Born to Run”だけで6ヶ月もの録音期間を要しました。
Springsteenの完璧主義により、Phil Spectorの「ウォール・オブ・サウンド」のような壮大なサウンドを追求し、最終的には16トラックのミキシングコンソールに72もの異なるトラックを詰め込んだと言われています。
歌詞の内容は、しばしば「ウェンディ」という少女へのラブレターとも解釈されますが、スプリングスティーン自身はこの曲について、シンプルに「Highway 9」をバイクで走り抜け、故郷ニュージャージー州フリーホールドを後にする情景を描いたものだと語っています。
その情景は、「sprung from cages out on Highway 9(檻から飛び出すようにハイウェイ9号線を走り出し)」という歌詞にも象徴されています。
歌の中で語られる愛のメッセージは、愛する人とともに未来へ向けて「今ある場所」から脱出する希望そのものです。
曲に登場する若者たちは、生まれ持った環境やアメリカンドリームとは無縁の現実から逃れようと、バイクで見知らぬ明日へと走り出します。
その姿は「Born to Run」(走るために生まれた)=「俺たちは走るしかない」というメッセージとなって表現されており、苦しい環境にいながらも前を向いて生きる若者たちの姿が、聴く者の胸を打ちます。
スプリングスティーンが本作で目指したのは、ただ力強いロックナンバーを作ることだけではなく、ひと夏の“ある一日と一夜”という大きな物語を楽曲全体に封じ込めることでした。
彼特有の映画のような叙情的な歌詞と、さまざまな楽器を重層的に重ねた壮大なサウンドは、リスナーに強烈なインパクトを与えます。
この楽曲を訳しながら、その詩的な世界観や社会的なテーマの深さに、まるでボブ・ディランのように矛盾や弱者の悲しみを抒情的に描き出している点に気づかされます。
「Born to Run」は、ただのロックソングを超えた名曲といえるでしょう。
ライブ映像を観ると、スプリングスティーンの魂の込もった歌声や演奏が伝わってきます。特に2009年のハイドパークでのパフォーマンスなどは、年齢を重ねてもなおロックンロールで観客を魅了し続ける姿がとても印象的です。
曲の動画
動画は以下をアップしています。
- ・1975年アルバム「Born To Run」バージョン
- ・Bruce Springsteen – Born to Run (Official Video)
- ・Bruce Springsteen & The E Street Band – Born to Run (London Calling: Live In Hyde Park, 2009)


この動画を YouTube で視聴
歌詞の和訳(Born to Run 明日なき暴走)
(原詞:太文字)
Born to Run
In the day, we sweat it out on the street *1
昼の間、俺たちは通りでじっと耐える
Of a runaway American dream *2
そこはアメリカンドリームとは程遠い
At night, we ride through mansions of glory
夜になると、俺たちは豪華な屋敷を走り抜ける
In suicide machines
自暴のマシンで
Sprung from cages out on Highway 9
檻からハイウェイ9へ飛び出した
Chrome wheeled, fuel injected and steppin’ out over the line *3
クロームホイール、燃料を注ぎ込んだら車線を越えていく
Oh, baby this town rips the bones from your back *4
ああ、ベイビーこの街にいると心底骨抜きにされちまう
It’s a death trap, it’s a suicide rap
それは死の罠だ、自暴のノックなんだ
We gotta get out while we’re young
まだ若いうちに二人で出て行こう
`Cause tramps like us, baby we were born to run *5
俺たちのような根無し草は、ベイビー走り続けるしかない
Yes, girl, we were
そう、少女よ、俺たちは
2)
Wendy let me in, I wanna be your friend
俺を受けいれてくれウェンディ、君の相棒になりたいんだ
I want to guard your dreams and visions
俺は君の夢や未来を見守りたいんだ
Just wrap your legs ‘round these velvet rims *6
さあ君の足でこのヴェルヴェット・リムを覆い
And strap your hands across my engines *7
俺のエンジンに両手をまわすんだ
Together we could break this trap
二人いっしょならこの罠を壊せるさ
We’ll run till we drop, baby we’ll never go back
堕ちるとこまで走ろう、ベイビー俺たちは戻らない
Oh, will you walk with me out on the wire? *8
ああ、俺と縛りを捨てて出て行かないか
`Cause baby I’m just a scared and lonely rider
俺はただの臆病で孤独なライダーだけど
But I gotta find out how it feel
その気持ちを確かめたいんだ
I want to know if love is wild, babe
愛は自然なものかを知りたい、ベイビー
I want to know if love is real
愛は実在するのか知りたい
Oh, can you show me?
ああ、俺に見せてくれるかい
3)
Beyond the palace, hemi-powered drones *9
宮殿の向こうには、ヘミエンジンに乗ったスネカジリどもが
Scream down the boulevard
大通りで叫ぶ
The girls comb their hair in rearview mirrors
小女たちはバックミラーで髪をとかし
And the boys try to look so hard
少年たちは一生懸命に見ようとする
The amusement park rises bold and stark *10
遊園地が大胆かつ荒々しくそびえ立ち
Kids are huddled on the beach in a mist
子供たちは霧に包まれた海岸に身を寄せ合う
I wanna die with you, Wendy, on the streets tonight
お前と死にたいんだ、ウェンディ、今夜この通りで
In an everlasting kiss
永遠に続くキスをしながら
4)
(1, 2, 3, 4) The highways jammed with broken heroes
ハイウェイはいかれたヒーローたちであふれてる
On a last chance power drive
爆走できる最後のチャンスに
Everybody’s out on the run tonight *11
今夜は誰もが逃げ回るが
But there’s no place left to hide
どこにも隠れる場所は残ってはいない
Together, Wendy, we can live with the sadness
共に、ウェンディ、悲しみを背負っても生きていける
I’ll love you with all the madness in my soul
俺はお前を気が狂うほど愛す
Oh, someday girl, I don’t know when
ああ、いつか少女よ、いつかになるか分からないが
We’re gonna get to that place
俺たちはそこへたどり着くさ
Where we really want to go, and we’ll walk in the sun
二人がほんとうに行きたいところで、太陽の下を歩くんだ
But till then, tramps like us
だけどそれまでは、俺たちのような根無し草は
Baby, we were born to run
ベイビー、走り続けるしかない
Oh honey, tramps like us
ああハニー、俺たちのような根無し草は
Baby, we were born to run
ベイビー、走り続けるしかない
Come on with me, tramps like us
さあ行こうぜ、俺たちのような根無し草は
Baby, we were born to run
ベイビー、走り続けるしかない
キーワード
- *1 sweat it out:「汗をかいて乗り切る」「じっと待つ」から「じっと耐える」としました。
- *2 runaway:「逃げる」の意味から(アメリカンドリームから)「程遠い」としました。
- *3 steppin’ out over the line:”step out “「飛び出す」、”over the line”「ラインを超える」から、「車線を越えていく」としました。
- *4 this town rips the bones from your back:「この街はお前の背中から骨を切り取る」から「骨抜きにする」の意味に変え「この街にいると心底骨抜きにされちまう」にしました。
- *5
- tramps:「浮浪者」「放浪者」から「根無し草」としました。
- we were born to run:「走るために生まれてきた」を文脈から「走るしかない」としました。
- *6 velvet rims:リムとはホイールの輪の部分ですが、おそらく製品名称と思いましたので「ヴェルヴェット・リム」としました。
- *7 strap your hands across my engines:直訳では「俺のエンジンの横を交差して両手を結ぶ」ですが、分かりにくいので「俺のエンジンに手をまわすんだ」としました。
- *8 on the wire:「縛り」と訳しました。
- “drones”はスラング的に「雄バチ(仕事をしない意)」や「なまけもの」そして文中に”palace”「宮殿」があることから「スネカジリ」としました。
- *10 bold and stark:”bold”「大胆な」「図太い」「際立った」、”stark”「厳しい」「硬直した」「荒涼とした」から「大胆かつ荒々しく」としました。
- *11 out on the run:「逃走して」「逃げ回って」
アーティストの紹介|Bruce Springsteen ブルース・スプリングスティーン
- 名前:Bruce Springsteen(ブルース・スプリングスティーン)
- (出生名:ブルース・フレデリック・ジョセフ・スプリングスティーン)
- 生誕:1949/9/23 –
- 出身地:アメリカ ニュージャージー州ロングブランチ
- サマリー:ブルース・スプリングスティーン(1949年9月23日生まれ)は、アメリカのロック音楽界を代表するミュージシャン。ニュージャージー州出身で、「ザ・ボス」の愛称で親しまれている。
アーティストの軌跡
ブルース・スプリングスティーンは、幼少期にエルビス・プレスリーに憧れて10歳でギターを手にし、地元ニュージャージーでアマチュアバンドを結成して音楽活動をスタートさせました。
1973年1月、CBSレコードのオーディションをきっかけに、アルバム『アズベリー・パークからの挨拶(Greetings from Asbury Park, N.J.)』でレコードデビューを果たします。
当初は「第二のディラン」とも呼ばれていましたが、本人はあくまでロックンロールの道を志向し続けていました。
同年9月には2枚目のアルバム『青春の叫び(The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle)』を発表します。
転機となったのは、ロック評論家ジョン・ランドーをプロデューサーに迎え、1975年8月にリリースした『明日なき暴走(Born to Run)』。
このアルバムは大ヒットし、タイトル曲「Born to Run」はローリング・ストーン誌の「オールタイム・グレイテスト・ソング500(2004年版)」で21位にランクインするなど、彼の名を一躍世界に広めました。
1980年には5枚目のアルバム『ザ・リバー(The River)』を発表し、初めて全米アルバムチャートの1位を獲得します。
収録曲の「ハングリー・ハート(Hungry Heart)」や表題曲「ザ・リバー(The River)」は話題となり、1年以上にわたるワールドツアーも成功を収めました。
その後、1984年6月にリリースした7枚目のアルバム『ボーン・イン・ザ・U.S.A.(Born in the U.S.A.)』は大ヒットし、長期にわたりアルバムチャート1位の座を守りました。
タイトル曲は、当初多くの人に「アメリカで生まれた誇り」を歌うものと解釈され、当時のレーガン大統領の演説でも引用されました。
しかし、実際にはベトナム戦争帰還兵が味わった苦悩や、冷淡な社会への怒りを込めており、スプリングスティーン自身はアメリカの矛盾を訴えた作品でした。
1999年にはロックの殿堂入りを果たし、2001年にアメリカ同時多発テロの犠牲者に捧げたアルバム『ザ・ライジング(The Rising)』をリリース。
音楽活動の傍ら、政治的発言も積極的に行い、2004年の大統領選挙では反ブッシュの立場を鮮明にするなど、単なるミュージシャンの枠を超えて社会的影響力を持つ存在となっています。
近年も精力的に音楽活動を続ける中、2021年には自身の全楽曲の権利をソニー・ミュージックエンタテインメントに売却。
報道によれば、売却額は5億ドル以上とされ、これは1人のアーティストとして過去最高額とも言われています。
スプリングスティーンは米国で7,100万枚以上、世界で1億4,000万枚以上のアルバムを販売し、世界で最も売れているアーティストの一人となっています。
20のグラミー賞、2つのゴールデングローブ賞、アカデミー賞、特別トニー賞など数々の栄誉を受賞しているスプリングスティーンは、2010年にローリング・ストーン誌が選ぶ「史上最も偉大なアーティスト100人」で23位にランクされ、「ロックンロールの化身」と評されました。
ディスコグラフィ
代表曲:
- 1975 Born to Run
- 1980 The River
- 1980 Hungry Heart
- 1982 Atlantic City
- 1984 Dancing in the Dark
- 1984 Born in the U.S.A.
- 1984 Glory Days
- 1985 I’m on Fire
- 1987 Brilliant Disguise
- 1994 Streets of Philadelphia
- 2002 The Rising
- 2007 Radio Nowhere
アルバムの紹介
1973年 青春の叫び / The Wild, The Innocent & The E Street Shuffle
1975年 明日なき暴走 / Born To Run
1978年 闇に吠える街 / Darkness On The Edge Of Town
1980年 ザ・リバー / The River
1982年 ネブラスカ / Nebraska
1984年 ボーン・イン・ザ・U.S.A. / Born In The U.S.A.