曲の紹介|The Stranger ストレンジャー

インフォメーション
- 曲名:The Stranger ストレンジャー
- アーティスト:Billy Joel ビリー・ジョエル
- 作詞・作曲:
- Billy Joel ビリー・ジョエル
- リリース:
- 1977年9月29日 アルバム『The Stranger』収録
- 1978年 シングル「The Stranger」日本リリース
- 1978年 日本オリコン・シングルチャート2位獲得
- サマリー:
- ビリー・ジョエルの最も象徴的な楽曲の1つ。キャリアの転換点となったアルバム『The Stranger』のタイトルトラック。プロデューサーのフィル・ラモーンとのコラボレーションで生まれた、ピアノ・ロックの金字塔。
- まるでカール・ユング心理学の「影(シャドウ)」概念のような、人間が外には見せない「もう一人の自分」をテーマにした哲学的な歌詞と、ビリー・ジョエル自身が口笛で奏でる印象的なメロディが特徴。
- アルバム『The Stranger』は全米ビルボード200で6週連続2位を記録。グラミー賞2部門を収録曲「Just the Way You Are」で受賞。コロンビア・レコード史上最多売上アルバムとなり、アメリカ国内だけで1200万枚以上を売り上げた。
- ローリング・ストーンの選ぶ「500 Greatest Albums of All Time」(2003年版)では70位にランクインしている。
- 記事参照元:
- The Stranger (Billy Joel song) – Wikipedia
- The Stranger (album) – Wikipedia
- Billy Joel – Wikipedia
- 歌詞参照元:Billy Joel – The Stranger – Genius / Billy Joel Official Site
曲について
「The Stranger(ストレンジャー)」は、1977年にビリー・ジョエルが作詞・作曲した楽曲で、同名アルバムのタイトル曲です。
プロデューサーのフィル・ラモーンとニューヨークのA&Rレコーディング・スタジオで制作されたこの曲は、ロック・ポップの枠を超え、人間の心理に深く踏み込んだ傑作として現在に至るまで高く評価されています。
生まれた口笛のメロディ
この曲で最も印象的なのは、イントロとアウトロに流れる口笛のメロディです。ビリー・ジョエルはもともと、この旋律をなんらかの管楽器に演奏させるつもりでした。
レコーディング・セッションでフィル・ラモーンの前でメロディを口笛で鳴らしてみせたところ、ラモーンはすぐさまこう告げました。「その口笛こそが『見知らぬ者』の声だ」と。ビリーの即興的な口笛がそのまま楽曲の核心となり、ノワール映画のサウンドトラックを思わせる、ミステリアスな世界観が生まれました。
曲のテーマ
この曲についてビリー・ジョエルは、「特定のテーマを決めずに書いた、解釈は聴き手に委ねられている」と語っています。
一方、音楽評論の世界では、カール・ユングが提唱した「影(シャドウ)」~人間が意識的に認めようとしない、心の奥底に押し込められた「もう一人の自分」~の概念と重なるとして、広く語られています。
愛と裏切りの物語
曲中盤には、ビリー・ジョエル自身の体験を思わせる具体的なエピソードが描かれます。
「かつて自分は素晴らしいロマンチストだと信じていた。だが帰ってきた先に、誰だかわからない女性がいた」——長い付き合いの中でも、人はある日突然、相手の中に「見知らぬ誰か」を発見することがあります。
これは浮気や欺瞞を描いているのではなく、どんな親密な関係の中にも存在する「他者性」と「人間の不可解さ」への静かな問いかけです。
アルバムを象徴するタイトルトラック
アルバム『The Stranger』は1977年9月29日にコロンビア・レコードからリリースされました。録音はわずか3週間で完了し、ビリー・ジョエルが誇るツアー・バンドのメンバー——ドラムのリバティ・デヴィット、ベースのダグ・ステグマイヤー、サックスのリッチー・カナータ——が中心を担いました。
タイトルトラックはアルバムの哲学的な支柱として機能し、曲の口笛テーマはラストトラック「Everybody Has a Dream」の後にも隠しトラックとして再び流れ、アルバム全体に統一感を与えています。
日本での特別な人気
「The Stranger」は1978年に日本でシングルとしてリリースされ、オリコン・シングルチャートで2位を記録。47万1000枚以上を売り上げる大ヒットとなりました。
日本でのコンサートでは必ず演奏される定番曲となっており、「オネスティ(Honesty)」と並ぶ日本市場での代表曲です。ビリー・ジョエルの音楽が日本のリスナーに長く愛され続けていることを示す、象徴的な存在です。
記録的なアルバムの成功
アルバム『The Stranger』は全米ビルボード200で2位まで上昇し、チャートに17週間トップ10入りを果たしました。「Just the Way You Are」「Movin’ Out」「She’s Always a Woman」「Only the Good Die Young」の4枚のシングルがすべてトップ40入りを果たす快挙を達成。
「Just the Way You Are」は第21回グラミー賞で最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞の2部門を受賞しました。アルバムの総売上はアメリカ国内だけでダイヤモンド認定(1200万枚超)を獲得し、当時のコロンビア・レコード史上最多売上記録を塗り替えています。
音楽史への刻印
リリースから約50年が経過した今も、「The Stranger」は色あせることなく聴かれ続けています。スヌープ・ドッグの「Tha Shiznit」をはじめ、ヒップホップシーンでも多数サンプリングされ、世代を超えた影響力を持つ楽曲として認識されています。
ローリング・ストーン誌は2003年版「500 Greatest Albums of All Time」でアルバム『The Stranger』を70位に選出。「ビリー・ジョエルがこれだけ良い曲を揃えたアルバムは、これ以前も以後も存在しない」と評しています。
曲の動画
以下の動画をアップしています。
- The Stranger – Billy Joel (Official Audio) – Billy Joelチャンネル(ページトップ)
- Billy Joel – The Stranger (Live 1977) – Billy Joelチャンネル
- Billy Joel – The Stranger (Live from Long Island) – Billy Joelチャンネル
歌詞の和訳|The Stranger ストレンジャー
(原詞:太文字)
The Stranger
Well, we all have a face
誰もがある顔を持っていて
That we hide away forever
永遠に隠し続けている
And we take them out and show ourselves
それを取り出し自分を見せるのは
When everyone has gone
誰もいなくなった時
Some are satin, some are steel,
サテンのものもあれば、鋼のものもある
Some are silk and some are leather
シルクのものにレザーのものも
They’re the faces of a stranger
これらはみんな見知らぬ顔だ
But we love to try them on
でも誰もがそれを試してみたくなる
Well, we all fall in love
誰もが恋に落ちる
But we disregard the danger
だけどその危うさには目を向けない
Though we share so many secrets
多くの秘密を分かち合っても
There are some we never tell
決して打ち明けないものもある
Why were you so surprised
なぜそんなに驚くんだ?
That you never saw the stranger?
見知らぬ顔など見たことはないと
Did you ever let your lover
君は恋人に見せたことはあるか?
See the stranger in yourself?
自分の中の見知らぬ顔を
Don’t be afraid to try again
恐れずにやり直せばいい
Everyone goes south every now and then *1
誰もが道を誤る時があるのさ、たまにはね
You’ve done it,
君だってそうしてきたじゃないか、
Why can’t someone else?
なぜ他の人はダメなんだ?
You should know by now
もう分かってるはずさ
You’ve been there yourself *2
君自身がそうしてきたと
2)
Once I used to believe
かつて僕は信じていた
I was such a great romancer *3
自分は素晴らしいロマンチストだと
Then I came home to a woman
それで家に帰ると女性がいて
That I could not recognize
誰だかわからなかった
When I pressed her for a reason *4
理由を問い詰めてみたが
She refused to even answer
彼女は答えることすら拒んだ
It was then I felt the stranger *5
その時初めて見知らぬ顔を感じた
Kick me right between the eyes *6
眉間に一発食らったように
Well, we all fall in love
誰もが恋に落ちる
But we disregard the danger
だけどその危うさには目を向けない
Though we share so many secrets
多くの秘密を分かち合っても
There are some we never tell
決して打ち明けないものもある
Why were you so surprised
なぜそんなに驚くんだ?
That you never saw the stranger?
見知らぬ顔など見たことはないと
Did you ever let your lover
君は恋人に見せたことはあるか?
See the stranger in yourself?
自分の中の見知らぬ顔を
Don’t be afraid to try again
恐れずにやり直せばいい
Everyone goes south every now and then
誰もが道を誤る時があるさ、たまにはね
You’ve done it,
君だってそうしてきたじゃないか、
Why can’t someone else?
なぜ他の人はダメなんだ?
You should know by now
もう分かってるはずさ
You’ve been there yourself
君自身がそうしてきたと
3)
You may never understand
決してわからないかもしれない
How the stranger is inspired
見知らぬ顔にどうやって突き動かされるのか
But he isn’t always evil
でもそいつはいつも邪悪なわけじゃない
And he isn’t always wrong
いつも間違っているわけでもない
Though you drown in good intentions *7
どんなに善意ぶっても
You will never quench the fire *8
その炎を鎮めることはできない
You’ll give in to your desire
君は欲望に屈するだろう
When the stranger comes along
見知らぬ顔がやってくれば
キーワード
- *1.
- goes south: 「うまくいかなくなる」「ダメになる」という意味の英語スラング。
- 「計画が南に向かう=崩れていく」という語感から来た表現で、「誰だって失敗することがある」という文脈で使われています。
- now and then:「時々」「たまに」
- goes south: 「うまくいかなくなる」「ダメになる」という意味の英語スラング。
- *2.You’ve been there:「そこに行ったことがある」ではなく、相手の辛い経験や悩みに対して「同じ経験をしたことがある」という意味で、「そうしてきた」としました。
- *3.romancer:「ロマンス作家、空想家、夢想家」を文脈から「ロマンチスト」としました。
- *4.pressed for:「〜を強く求める」「〜を要求する」
- *5.It was then:「まさにその時」「そんな時」「その瞬間」を、文脈から「その時初めて」としました。
- *6. kick me right between the eyes: 「目の間(眉間)を蹴られる」→突然の衝撃や、ハッとするような気づきを表す慣用表現。
- 親密だと思っていたパートナーの中に「見知らぬ顔」を発見した時の驚きと痛みを、この一行で表現しています。
- *7.drown in good intentions:”drown in”「溺れる」、”good intentions”「良い意図、意向(善意)」を文脈から「善意ぶる」としました。
- *8. quench the fire: 物理的な「火を消すこと」、または「熱狂や欲望、怒りなどを鎮めること」を意味します。
アーティストの紹介|Billy Joel ビリー・ジョエル

インフォメーション
- 名前:Billy Joel(ビリー・ジョエル) 本名:William Martin Joel
- 初期バンド活動(1964-1970年):
- The Echoes / The Lost Souls(1964〜1967年)
- The Hassles ザ・ハッスルズ(1967〜1969年)
- Attila アティラ(1969〜1970年 デュオ)
- 誕生:1949年5月9日
- 出身地:アメリカ合衆国 ニューヨーク州ブロンクス生まれ、ロングアイランド・ヒックスビル育ち
- サマリー:
- ビリー・ジョエル(Billy Joel)は、1949年にニューヨークで生まれ、1964年から音楽活動を開始した歌手・ソングライター・ピアニストで、「ピアノ・マン(Piano Man)」の愛称で親しまれている。
- ロック、ポップ、ソウル、ジャズを融合させた音楽スタイルで、世界中で推定1億6000万枚以上のレコードを売り上げ、アメリカでは4番目に売れたソロアーティストとなった。
- 公式サイト:https://www.billyjoel.com/
アーティストの軌跡
ビリー・ジョエルは1949年5月9日、ニューヨーク州ブロンクスに生まれました。生後間もなく一家はロングアイランドのヒックスビルに移り、彼はそこで育ちます。
母の強い勧めで4歳からピアノのレッスンを始めた彼は、14歳でザ・エコーズに加入。その後バンドをいくつか経て、1969年にアティラというデュオを結成しましたが翌年解散。1971年、ファースト・ソロアルバム『Cold Spring Harbor』でデビューを果たしました。
コロンビアとの契約、そして「ピアノ・マン」
1972年、フィラデルフィアのラジオ局でライブ演奏「Captain Jack」が話題となり、コロンビア・レコードと契約。1973年のアルバム『Piano Man』でリリースしたタイトル曲「Piano Man」が代表曲となり、以来コンサートのクロージングで欠かさず演奏され続けています。
続く『Streetlife Serenade』(1974年)、『Turnstiles』(1976年)は商業的に伸び悩み、コロンビアからの契約打ち切りをちらつかせられるほどの苦境でした。
『The Stranger』による商業的ブレイクスルー
1977年、フィル・ラモーンをプロデューサーに迎えてリリースした『The Stranger』が、すべてを変えます。
「Just the Way You Are」「Movin’ Out」「She’s Always a Woman」「Only the Good Die Young」の4曲すべてがトップ40入りを果たし、全米ビルボード200では2位を6週間維持。最終的な売上はアメリカだけで1200万枚超えとなり、当時のコロンビア・レコード史上最多売上アルバムとして記録を塗り替えました。
「Just the Way You Are」は1979年の第21回グラミー賞で最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を受賞。ビリー・ジョエルがパリ公演のツアー中にホテルで深夜その知らせを受けた逸話は有名です。
ヒット作の連打
1978年の『52nd Street』ではビルボード200で1位を獲得し、グラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞。1980年の『Glass Houses』では「It’s Still Rock and Roll to Me」がビルボード・Hot 100で自身初の1位を記録しました。
1983年の『An Innocent Man』からは「Uptown Girl」「Tell Her About It」「The Longest Time」など多彩なヒット曲が生まれ、50年代〜60年代のR&Bやドゥーワップへの愛情があふれる作品として高く評価されています。1989年の『Storm Front』収録「We Didn’t Start the Fire」も2度目のビルボード1位を獲得。その後1993年の『River of Dreams』まで、途切れることなく成功を収め続けました。
ライブアーティストとしての存在感
スタジオ作品の充実度と並んで、ライブパフォーマンスの評価も抜群です。1987年にはロック音楽の演奏が解禁されたばかりのソビエト連邦でのツアーを敢行した先駆者として知られています。
2006年からはニューヨーク・マディソン・スクエア・ガーデンのマンスリー・レジデンシーを開始し、延べ150回以上の公演を行う異例の記録を達成しました。2024年には約17年ぶりとなる新曲「Turn the Lights Back On」を発表し、現役の存在感を示しています。
栄光の足跡
グラミー賞は6回受賞、ノミネートは23回。1992年にソングライターズ殿堂、1999年にロックの殿堂入りを果たしました。2013年には音楽界最高の名誉の一つ、ケネディ・センター名誉賞を受賞。
世界で1億6000万枚以上のレコードを売り上げ、「ピアノ・マン」の愛称とともに、アメリカ音楽史に深く刻まれたアーティストです。
ディスコグラフィ
代表シングル
- 1973 Piano Man ピアノ・マン
- 1974 The Entertainer エンターテイナー
- 1976 Say Goodbye to Hollywood セイ・グッバイ・トゥー・ハリウッド
- 1977 Just the Way You Are 素顔のままで
- 1977 Movin’ Out ムーヴィン・アウト
- 1977 She’s Always a Woman シーズ・オールウェイズ・ア・ウーマン
- 1978 Only the Good Die Young オンリー・ザ・グッド・ダイ・ヤング
- 1978 The Stranger ストレンジャー
- 1978 My Life マイ・ライフ
- 1979 Big Shot ビッグ・ショット
- 1979 Honesty オネスティ
- 1980 You May Be Right ユー・メイ・ビー・ライト
- 1980 It’s Still Rock and Roll to Me ロックンロールが最高さ
- 1980 Don’t Ask Me Why ドント・アスク・ミー・ホワイ
- 1982 Pressure プレッシャー
- 1982 Allentown アレンタウン
- 1983 Tell Her About It テル・ハー・アバウト・イット
- 1983 Uptown Girl アップタウン・ガール
- 1983 An Innocent Man アン・イノセント・マン
- 1984 The Longest Time ロンゲスト・タイム
- 1986 A Matter of Trust ア・マター・オブ・トラスト
- 1989 We Didn’t Start the Fire ハートにファイア
- 1990 I Go to Extremes アイ・ゴー・トゥー・エクストリームズ
- 1993 The River of Dreams ザ・リバー・オブ・ドリームズ
- 2024 Turn the Lights Back On ターン・ザ・ライツ・バック・オン
代表アルバム
- 1973 Piano Man ピアノ・マン
- 1977 The Stranger ストレンジャー
- 1978 52nd Street ニューヨーク52番街
- 1980 Glass Houses グラス・ハウス
- 1982 The Nylon Curtain ナイロン・カーテン
- 1983 An Innocent Man イノセント・マン
- 1986 The Bridge ザ・ブリッジ
- 1989 Storm Front ストーム・フロント
- 1983 River of Dreams リヴァー・オブ・ドリームス
1973年 Piano Man / ピアノ・マン
1977年 The Stranger / ストレンジャー
1976年 / Turnstiles / ニューヨーク物語
1978年 52nd Street / ニューヨーク52番街
1980年 Glass Houses
1983年 An Innocent Man / イノセント・マン
1989年 Storm Front
2006年 Billy Joel The Ultimate Collection / ビリー・ザ・ヒッツ